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ただ、少年は少女を慰めるように抱きしめる。その温もりは確かに鬼姫を宥める様にしている。少しずつ少女の重心が前にかかっていくのがわかる。
しかし、鬼姫の表情は見えない。ゼルは不安になった。
従兄妹の苦しむ姿を見ていたのは本当のことで胸が苦しかったのも事実だ。だから出来るだけゼルは少しでもその重荷から救えるならとこうした。
しかし、結果は曖昧な結果だった。
「ルヴィ?」
ちょっと確認の為に赤い髪のルヴィを呼びかける。なるほど。名前通り綺麗な髪をしている。本当に修羅場を戦い抜いてきているとは思えないほどの質感に感化する。
って、違うだろ!俺……
「あ、うぅ……」
胸の辺りから暑い何かが感じられた時、ゼルはやっと安堵にかられる。正直拒絶されるのではと思った。
少しほっとしていた。
「ゼルは……卑怯です!……」
「それは悪かったな。もうやめるか?」
「い、いえ!その……」
ルヴィはまるで兄に甘えるように頬をすりすりする。愛情も知らない鬼姫はその威厳を完全に解いている。
こうして見ると可愛らしいと思ってしまう。姉さんにもこの新たな一面を教えてしまいたいと思うほどの笑顔だった。
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