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「どうって……」
今度は私が迷う番だった。
こんな風に尋ねる客は初めてだ。
今まで迎えた男は、灯りを消してくれとか、あるいは明るい方がいい、とか、こちらが問う前から自分の好みを伝えてきたし、中には部屋に入るなり自ら灯りを吹き消す手合いもいた。
「それは、潘(はん)少爺(さん)のお好きな方に合わせますわ」
誰も私の好みなぞ知ったこっちゃなかったから、自分でも考えたことはなかった。
「俺は……」
西瓜の種の香りがふっと匂った気がして目をやると、すぐ隣に彼がいた。
「暗くても、別に大丈夫だ」
ジリジリと弱まっていく灯りが男の蒼白い顔を下から浮かび上がらせる。
再び睫毛を伏せた男の目は、どこか本音を言い出すのを憚っているかに見えた。
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