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音が聞こえる。 タワーの上の方からだ。 それは、歌だった。誰が歌っているのだろう。歌声は徐々に大きく聞こえてきた。 綺麗な歌声だった。寒さも、痛みも、何もかもを忘れさせる、とても美しい音色。 雲がわずかに薄れ、雲間から僅かに陽の光が差し込む。 タワーの頂上。そこに人影。 ふわりと、それは舞い降りた。 ぼくはその人を知っている。でも、誰だか思い出せない。 ぼくはその人に何かを言おうとした。でも、言葉にならない。 それでもその人は、ぼくが何を言おうかわかったらしい。 その人は優しく微笑む。泣いてもいるようだった。 その人にはなぜか、翼が生えていた。ぼくはその翼に包み込まれる。 暖かい。とても、温かい。 その人は、ぼくの頬を撫でた。そして、抱きしめてくれた。 ――夢は、そこで終わった。
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