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自宅兼研究所から出る。研究用にと様々な薬草などが繁る庭を抜け、ネルフェは門を潜った。
そこは、王都の中でも研究区画として知られる第二区の一番奥。すなわち、名だたる研究者たちが住まうこの辺りでも、かなりの力を持っていることを示していた。
ネルフェは相変わらず人気のない道を歩いた。特にこれといった目的もない。ただの散歩である。
どうせだから、賑わいのある広場にでも行くか。
王国認定第一等級医療術師のみが着衣を許される白い紋章つきのローブのポケットに手を突っ込みながら、ネルフェはブラブラと歩いていった。
第三区画にある広場近くまで来ると、さすがに人が賑わっていた。昼前のこの時間は、昼食の買い物に来た婦人や召使いでいっぱいだった。
中にはデート中らしいカップルの姿も見える。
幸せそうな彼らを見て、ついつい昔を重ねてしまう。幸せの時。
せっかく気晴らしに来たのに、来て早々落ち込むとは何事か。とネルフェは頭を切り替えた。
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