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宛もなくただブラブラとさ迷い歩く。人々の視線が刺さるのが分かる。
皆、このローブを見ているのだ。第一等級医療術師など、そうお目にかかれるものではない。せいぜい、その功績や噂などを人伝に聞くしかないのだ。
しかし、そればかりではなかった。ネルフェの容姿だ。
190はある背に、その整った容姿は、眼鏡をかけるだけでは隠しようもない。浮き世離れた美しさに、町娘たちは虜となってしまうのだった。
「あれ、ネルフェさま?」
男の声がかかった。
第一等級医療術師というたいそう立派な肩書きを持つ人間に、そう簡単に声などかけることはできない。
そして、こんな平民たちが多くいる場所に地位のある人間がいるとも考えられない。
一体誰だ、とネルフェは振り向いた。
「やっぱりネルフェさま!元気でしたか」
「……トックス」
振り向いた先にいたのは、筋肉質な体の二十歳後半ほどの男だった。
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