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天高くそびえるたいそう立派な城があった。城の周りは深い森に囲まれ、また森のそとには深い谷があった。何人も寄せ付けぬ風格と共に。
その城の城主、ザグは己の書斎にて静かに座っていた。テーブルに置かれたワイングラスには、蜂蜜色の酒がわずかに残っている。
「ザグさま」
聞こえた声にザグが入室を許可した。扉がゆっくりと開いていく。ザグはその様子をじっと見ていた。
「どうしたのだ」
ザグは部屋に入ってきた女に声をかけた。広い部屋に静かに響き渡る。
「ザグさまのお側にいたくって」
女の美しい声がザグの耳に心地よく響いた。声ばかりでなく、その容姿も女は美しい限りだった。
身に纏う柔らかな絹のドレスに流れるシワひとつとっても、どんな女も敵わぬ気品があったし、その豊かなブロンドの髪は精霊たちも羨むばかり。その白い肌だって天使たちさえも及ばないだろう。他、挙げればきりがないほどに女は素晴らしかった。
また、ザグも美しい男だった。高い身長の大男であったが、その憂いのある瞳に見つめられれば、どんな女も、生き物も、感嘆のため息しか出ない。その逞しい体に抱かれれば、ずっとすがり付いていたくなる。
ザグが女を側に呼び並ぶと、どんな絵画よりも美しい男女の絵となるのだった。
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