16人が本棚に入れています
本棚に追加
シファが最後にこの部屋に着たのは、確か一ヶ月ほど前だったか。わたしにレポートを見てもらいたいと訪ねてきたのだったなぁ。
そしてその一ヶ月の間にネルフェは賞をもらっていた。最近発行した医術学書が高く評価され、高い印税と共に手元に転がり込んできたのだ。
その旨をシファに話すと、彼はそういえばと納得した顔になった。
「まったく、師の活躍ぶりくらい把握しているものですよ」
「それは、普通の場合のことですよ。ネルフェさまはすぐに何か評価されてしまうから、そんなことに時間を割かれるならば研究していますよ」
弟子にあるまじき言葉に笑い声がもれた。やれやれ、誰がこんな風に育てたのか。いや、育てたのはネルフェである。
「まぁ、お前のことは咎めまい。もしわたしが同じ立場だったら、全く同じことを言うに違いないでしょうから」
「さすが、ネルフェさま」
それから話題は自然とシファの研究のことへと変わっていった。もとより、彼はその事でネルフェを訪ねてきたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!