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「それで、第二研究室の使用許可並びに実験生物を何体か頂きたいのです」
「鍵はお渡ししましょう。ただし、実験生物は法に触れないものを調達してください。何でもかんでもわたしを頼ってばかりではいけませんからね」
そう言ってネルフェは懐から銀の鍵束と黒のカードキーを差し出した。研究所は危険物の取り扱いや、国家並みの機密情報がわんさかあるため、警備はしっかりしている。
シファはそれらをきちんと確認してから、大切に懐へしまった。重要なものは、必ずいちいち確認すること。当たり前のことだが、ネルフェのもとにいる研究者は必ずこの癖がついている。
「確かに。それじゃ、森から数体狼をさらってきますよ」
「あ、言い忘れましたが、もしギルドを頼るなら自腹でお願いしますね」
「やっぱり……。せめて、3割は」
すがるようにお願いしてくるシファを、ネルフェは顔色を変えずに切った。
「いいえ、びた一文も出しません。たまには自分で森に行ったらどうです。ギルドなんかに頼むくらいなら、腕の一本や二本くれてやりなさい」
「そんな、殺生な。私が攻撃魔法が苦手なこと、ネルフェさまはご存知でしょう。というか、それってネルフェさまがギルド嫌いだからじゃあないですか」
シファはコーヒーを啜りながら恨めしげにネルフェを見た。ネルフェはふふ、と笑って言う。
「ええ、大っキライですよ、あんな所。早く潰れてしまえばいいものを」
「末期だ……」
キラキラと輝くようや笑顔で言いきったネルフェに、シファはげんなりと呟いた。これでは、残念ながら資金を増やせそうにない。
シファは早々に諦めて、挨拶をして書斎から出ていった。
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