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一人になったとたん、ネルフェの顔から笑みが消えた。冷たく鋭い瞳が数々の栄光に注がれる。
今でこそあの頃から髪も伸び眼鏡もかけて人当たりのよい青年を演じているが、その内面は魔王であったザグの時から殆ど変わってはいなかった。
千年。
その長い年月をザグは封印されてきた。忌々しくも、愛しい人を人質にとられ、屈辱的な敗北からずっと。
ようやく束縛から逃れてみれば、地上の時は思っていたよりも進み、愛するものもとうに散っていた。いるのは、憎い人間ども。同胞たちも、住みかを追われて、ほとんどが辺境にひっそりと暮らしている。
全くもって、ロコネと同じ種族とは思えなかった。
そんなザグが何故人に紛れているのか。しかも、医療などという人助けのような役職で。
「嗚呼――くだらぬな、全く」
ザグ――ネルフェは冷たく言い捨てると、静かにその場を後にした。
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