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寮の部屋に着くと、すぐにジョセフィーヌを籠から出してやった。
俺の足に軽く体を擦りつけた後、ゆっくりと部屋の奥へと歩いていくジョセフィーヌの姿をぼんやりと目で追った。
のろのろと靴を脱ぎ、キッチンへと向かう。
ジョセフィーヌの餌の用意をし、いつもの場所に皿を置いた。
すぐに飛んできたジョセフィーヌが餌を貪り食べる様子をリビングに置かれたソファの上から眺めながら、細く長い溜め息をついた。
さっきまであんなに軽かった心が、ずっしりと重たくなっていくのを感じる。
…やっぱ、ひとりになるとダメだな。
自分から選んだことなのに、こんなにつらいなんて思わなかった。
ふとした瞬間にすぐ、あいつのことを考えてしまっている自分がいる。
後悔はなかった。
ただ、まだ少し時間がかかる。
あいつのことを思い出して、ああ、そんなこともあったなと笑えるようになるまでには、もう少し。
そんな日が本当に来るのかわからないけど、信じて待つしかできないから。
「…好き、だったんだよなぁ」
画面が真っ黒になっているスマホを片手で弄びながら、ぽつりと呟いた。
終わることが目に見えていたから、始めることさえできなかった。
気づいた時にはもう終わっていた、俺の初恋。
「…あ、れ」
ぽたり、ぽたりと、生温かいなにかが頬を伝った。
拭っても拭っても止まらないそれに途方に暮れていると、ジョセフィーヌが心配そうに近づいてくるのが見えた。
それを抱き上げて、ぎゅっと目を閉じる。
小さな嗚咽と、ジョセフィーヌのにゃあん、という鳴き声だけが、部屋に響いていた。
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