寮長を忘れないで の巻

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「寮長!?どしたんすかいきなり!」 寮長権限で中原のいる寮の部屋の場所を調べインターホンを鳴らすと、案の定というか、それはそれは盛大に驚かれてしまった。 「…とりあえず入れろ。ジョセフィーヌ触らせてやっから」 そう言いながらジョセフィーヌを入れた籠を見せると、中原は爛々と目を輝かせて俺を玄関に招き入れた。 「同室のやつは?」 「ああ、今は風呂に入ってるっす」 ベッドの脇に腰を下ろし、ジョセフィーヌを籠から出しつつ尋ねる。 同室のやつがアレルギー持ちだったらまずいと思ったが、それならいいかとジョセフィーヌを中原に差し出した。 少し不機嫌そうに尻尾を揺らしたジョセフィーヌだったが、中原が猫好き特有のモフリ攻撃を開始すると、しょうがねえなあ、といった表情をしつつも大人しくしていた。 「…で、寮長。なんの用すか?」 一頻り満足した様子で顔を上げた中原を見やり、俺は内心首を傾げた。 俺を部屋に迎え入れた時点で大方話の予想はついているだろうと思ったが、どうやらそうではないらしい。 「…俺、前に、食堂でお前に、ちゅ、ちゅーしたろ」 「えっ?ちょ、待って、それを今さら謝りにきたんすか?www」 「ちげえよ!!そうじゃなくて!」 ケタケタ笑い続ける中原に、俺は怒鳴らないように注意して続けた。 「そうじゃ、なくて…アレのせいで、お前、いろいろ嫌な目に遭っただろ」 「嫌な目?…あーまあ、いろいろあった気がするけど、え、なに、アレ全部寮長の仕業?www」 「いや、そういうわけじゃない、けど…原因作ったのは俺、だから…その…」 しどろもどろになりながらも、俺はようやく中原の顔を正面から見つめ、それから勢いよく頭を下げた。 .
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