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穏やかな陽射しの中にも、冬の気配を感じた。
いつの間にか葉を落とした街路樹がいくつか見られるようになった。
北風が、時折落ち葉をすっと掠めとる。
並んで歩きながら、どちらからともなく手をつないだ。
佐伯の大きな手に包まれていると、安心した。
懐かしいような、どこか切なくなるような不思議な感覚だった。
手から伝わる佐伯の体温が、今だけは、教師と生徒じゃないことをはっきりとさせていた。
月曜からはまた元に戻る。
そのリセットの繰り返しの中で、私たちは少しずつ変わっていくのだろうか。
見上げた佐伯の横顔は、そんな私の思いには気づいていないように、ただ真っ直ぐ前を向いていた。
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