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「俺だってわかんねぇよ。なんなんだよ、唯香のやつ。俺何かしたか? なあ?俺は何かしたのか?」
八つ当たりだと自分でも思う。
それでも何か口にしないと、不安で堪らない。
隣に座る宮下の服を掴んで、揺さぶった。
「先輩」
宮下の落ち着いた声がして、しっかりと胸の中に抱きしめられた。
心臓の音が聞こえてきて、目を閉じる。
じっと耳を傾けていると、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
「ごめん。お前に言ってもしょうがないよな」
唯香は俺の妹だから、俺がどうにかしなきゃいけないことで。
宮下には関係ない。
いや、関係はあるが、巻き込みたくはない。
できることなら。
「大丈夫ですよ。福原さん何も言ってなかったし」
「……ん」
「それに、俺は平気ですから」
「……ぅん」
背中に回された腕が、温かい。
ゆっくりと言葉を選ぶ宮下になだめられて、楽になった。
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