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福原さんが突然やってきたあの日から十日。
なにやらお疲れ気味の先輩のために、好物のイチゴオレを買いに来た。
最上階の自動販売機。
めったに人のいないそこに、めずらしく人影があった。
「あ……」
ピンク色の制服。
受付だけが着ているその服は、若い男性社員の憧れで。
俺の声に気づいて振り向いたのは、やはり福原さんだった。
「…お疲れ様です」
俺を見て、一瞬何かを考えて、それからにこやかな笑みを向けてくれた。
「あ、お疲れ様っス」
慌ててお辞儀を返す。
福原さんの手に握られていたのは、イチゴオレで。
親しげな子供っぽい笑顔で、自販機の前を譲ってくれた。
「七の分?」
二度ボタンを押した俺に、小声で問いかけてくる。
同じ嗜好をもつ者としての親しみが、そこにあった。
「先輩、お疲れみたいなんで」
課長とともに、朝から不在の先輩を思う。
昼には戻ると言っていたから、そろそろ帰ってくるだろうか。
イチゴオレ喜んでくれるかな。
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