7 誘われました…

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「んー、あー、しばらく俺、別の仕事することになった」 イチゴオレをすすりながら、先輩が言う。 熊谷さんも小石さんも席を外しているから、近くには誰もいない。 「別の仕事って?」 それでも椅子ごと近づいて、小さな声で尋ねてみた。 「……帰ったら話す」 俺を見て、口を開きかけて、そんな答えが返ってきた。 なんかもう、こっちもヤな予感。 異動ってことはないよな? 朝も昼も夜も、先輩が隣にいるのが当たり前だったから。 離れるのはすごく嫌だ。 仕事だからそんなこと言えないのはわかっているし、恋人とここまで一緒に居られることのほうが珍しいのもわかっている。 わかってはいても、嫌なものは嫌だ。 俺ってすっげえガキ。 先輩から離れながら、イチゴオレを飲み干した。 なんかこう、すっきりするもんが飲みてぇ。 空になったパックをゴミ箱に入れて、小さなため息をついた。 帰ったら、福原さんのことも言わないと…… 頭、痛ぇよ。
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