八 仕事の話

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「それで先輩のほうは?」 急に明るい声で、宮下が話題を変えた。 正直それどころではなくて、かいつまんで話をする。 要はひと月ほど、俺と離れて仕事をしろ、と。 そういうことだ。 案の定、一瞬、宮下の顔が曇った。 ただでさえ唯香のことで、なんというか、漠然としたもやもや感があるというのに。 ひと月とはいえ、違う仕事になるのは俺だって辛い。 でもそれは言えないことだから。 公私混同はしないと決めたのだ。 このまま、宮下とずっと一緒に居られたとして。 結婚とか出産とか、俺にはできないことがあるわけで。 それは仕方のないことだとわかってはいても、申し訳ない気持ちもしてくる。 だからこそ。 俺にできることは、何でもしてやりたい。 「その間は、熊谷さんにいろいろ教えてもらえ。いい機会だからな」 課長の言葉に甘えて、宮下を手元に置いておけばよかった。 そう思ってしまう弱い自分を振り切るように、笑顔で告げる。 宮下もバカじゃないから、俺の意図がわかるだろう。 「はい。がんばります」 ほらな。 ちゃんと笑ってくれた。
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