1 実家に帰ろう

9/20
前へ
/474ページ
次へ
「帰省するときに何か買っていきなさい。それと、もう社会人なんだから、ちゃんと親孝行してこい」 「…はい」 あきれたような先輩の声に、さすがにまじめに返事をする。 なんか俺って自分のことしか考えてなかったかも。 先輩ってすげぇなぁ。 俺のことまできちんと考えてくれてるなんて。 「土日合わせたら休みは一週間あるんだから、残りは一緒に過ごせるだろ?」 反省してしょんぼりと肩を落とすと、先輩の手が髪に触れた。 二三度撫でられてから、コツンと額が触れてきた。 「な?」 数センチの距離でそう言われ、俺の気分は一気に浮上した。 「先輩っ!」 抱きしめた先輩は大人しく腕の中に納まってくれていて。 俺は先輩のさらさらした髪に、顔をうずめた。
/474ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7061人が本棚に入れています
本棚に追加