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土曜日、午後二時。
それが福原さんとの待ち合わせ時間で。
朝から俺は迷っていた。
「なんでもいいだろ?」
あきれたような先輩の声。
それを後ろに聞きながら、手にした服に頭を悩ます。
「どっちがいいっスか?」
考えすぎてわからなくなってきた。
適当に二枚掴んで、振り返る。
あぐらで俺を見上げていた先輩が、ため息ついて立ち上がった。
「好きにしろ」
「ちょっ、先輩待って!」
部屋を出て行こうとする後ろ姿に、あわてて追いすがる。
抱きしめて、耳元で、精一杯の甘えた声。
「お願い?」
またしても盛大なため息をつかれた。
「あのなぁ。なんで俺が、お前と唯香のデート服を選ばなきゃいけないんだよ」
俺の腕から抜け出して、先輩が振り返る。
ちょっと怒ったような、拗ねたような顔。
ヤキモチですね、これは。
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