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宙を舞う花びらが、不規則に揺れて落ちていく
その中に一つ、他とは違うそれは混じっていた
私は幼い頃にしていたように、そっと右手を伸ばして空を掴んだ
手の中に、小さな、ひんやりと冷たい感覚
軽く握った手の中に小さな幸せがあるような気がした
やっぱり、春は好き
「紗由奈」
後ろから名前を呼ぶ声がした
振り返らなくても誰だか分かる
自然と顔が綻ぶ
「ねぇ薫、見てっ・・・」
私は振り返り、握っていた右手を開く
その瞬間、少し強い風がふいた
「っあ」
「おっと、」
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