悪戯な日。

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それを見届けてから、手すりを掴み立ち上がる。 足を庇いながら足ったためか、バランスを崩し後ろに倒れそうになる。 「ひゃっ」 倒れたときの衝撃は来ず、腰をグッと掴まれて支えられたらしい。 「ご…主人様」 「その足では1人で保健室は辛いだろう?」 膝の後ろに手を入れられ、なんとも軽々に持ち上げられる。 俗に言う、姫抱きで。 男としては悔しいが、気持ちとしてはなんというか、その、嬉しいというのが勝る。 アワアワしてしまい、どうしていいか分からなくなる。 恥ずかしくなり、ご主人様の胸に顔を埋めた。 人もそれなりにいるらしく、視線を感じるが、それどころではない。 保健室に着けば、中に保険医いなかった。 「ああ…今日保険医は出張だったな」 なんという、タイミング。 保険医がいない確率の方が高い気がする。 ベットに下ろされ、足を見ると見事に腫れ上がっていた。 これは、痛々しい。 ご主人様の姫抱きのせいか、足の痛みをすっかり忘れてしまっていた。 「ケホ…」 とりあえず、応急措置でもするか。 救急箱はどこだろう、と立ち上がろうと腰を浮かすと、肩を押され戻される。 ご主人様は湿布片手に、おれの足元に膝を付く。 その行動に驚く間もなく足を掴まれる。 「あっいやっそんなこと…ご主人様大丈夫ですから…っ」 最近で一番のテンパり具合だったと思う。 ご主人様はおれの精一杯の声を気にすることもなく、腫れたところを指ですっとなぞる。 「ひうっ」 「痛いだろうが、我慢しろ。後少しだから…な?」 ぺちっと足を叩くと、湿布をなんの合図もなしに張り付けられる。 「あっ…」 冷たさに声が漏れた。 「湿布貼ったし、とりあえずは良いだろう。後で保険医に診てもらえ」
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