文化祭準備の日。

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別に、急いでいる訳でもない。 生徒会への話かもしれないし。 おれは頷きで返すと、彼らは歩き出す。 着いて来い、ということなのか。 数人おれの後ろに回ってきたので、逃がす気はないらしい。 今更ながら少しばかり後悔。 面倒そうだ。 …心の中で呟くのは、自由だからね。 連れてこられたのは、体育館裏。 ああ、なんてベタな。 薄々勘づいてはいたのだけども。 これが所謂、制裁、ってやつですかね。 おれが学園に来てからも、小さい抗争はたまにあったが、すぐに解決できるものばかりで。 ご主人様が前に言った通りだと感じていた。 が、実際こう自分が制裁に合うとは…。 彼らは過激派なのか。 おれは、荒田さんに何もしてないのだけど。 「輝ちゃんに謝れ」 第一声。 不覚にもちゃん付けに笑いそうになった。 「謝れ、とは」 「輝ちゃんが言ってたんだぞ。宮野直紀は悪いやつで、皆を苦しめてる。オレにも意地悪してくるんだ、と!」 少なくとも、荒田さんに意地悪したつもりはないんだけどなあ。 ため息を飲み込み、俯く。 おれの何気ない行動で、皆を苦しめているのかも、しれない。 荒田さんの一言を流すことは出来なかった。 今までろくに友人をつくってこなかったんだ。 桐生で叩き込まれた常識では、傷付けてしまうかもしれない。 おれが何も言わないのを良いことに、彼らは言い続ける。 所謂、悪口だ。
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