3508人が本棚に入れています
本棚に追加
校舎の壁に背中を預ける。
せっかく夏川さんがセットしてくれた髪は、見る影もない。
ああ、ご主人様に見せたかったな。
なんて、ほんの少し現実逃避してみたが、痛みは消えてくれない。
踞るように腹を抱えれば、ザッと砂を踏む音が聞こえた。
「…直紀…?」
ハッと顔を上げれば、目を見開いた真倉さんが。
見られてしまった。
どうにか誤魔化せないかと、思考を巡らせるが、無理だろう。
「大丈夫か?」
「い、言わないでください!!」
半ば真倉さんの言葉を遮るように叫ぶ。
そのせいで、蹴られた腹に響いた。
「ご主人様には、言わないでください。お願い、します…」
頭を下げる。
なんて、不格好。
なんて、醜い行動。
それでも、ご主人様に無駄な心配はさせたくない。
「分かった。言わないさ、誰にもな。とりあえず、保健室に」
「ありがとうございます…」
立ち上がるが、お腹が痛くて、とても普通に歩くことは出来そうにない。
顔を歪めてしまえば、真倉さんは「ああ」とおれを抱き上げる。
姫抱きで。
「背負うのは、痛いだろう?」
確かに。
でも、何度かされているけど、やっぱり姫抱きは馴れないな。
真倉さんの手際の良い手当てのお蔭で、痛みは和らいだ。
最初のコメントを投稿しよう!