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「はい捕獲ぅっ!」
「え、うわ、皐月!?」
次の日。
学校は文化祭一色で、朝から準備に取り掛かっている。
その朝っぱらから、おれは皐月に担がれて拉致られている。
太ももを持つ手が際どいが、偶然だということにしておこう。
揺れる度に蹴られた腹に響いてきて、わりと辛い。
「はいどーん!衣装組が衣装作ったから着て来てよ。ほらはよ!」
クラスメイトに見られながら、着替え用に(多分)区切られたカーテンの奥に押し込まれる。
そして皐月もいる。なんでだ。
皐月に驚いているうちに連れて来られたから、状況判断が追い付いていない。
「はいバンザーイ」
思わず、手を上げた。
シャツを捲られてしまう。
はっとして、慌てて隠した時には、皐月にバッチリ見られてしまった後だった。
うっかりしていた。
湿布を貼っているが、痛々しい青アザは湿布からはみ出ている。
「その傷って…」
「なんでもないんだ!」
思ったよりも大きな声だった。
「おれは、大丈夫だから。皐月もお願い。誰にも言わないで」
ご主人様に、迷惑をかけたくない。
バレたくない。
「…分かった。僕は何も見てない。誰にも言わない。…それ、着替えてきてよな」
「ありがとう、皐月」
それには応えないで、皐月はカーテンの外へと出ていった。
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