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もそもそとわんこコスの服を脱ぎながら、顔が緩んでしまうのを必死に抑えた。
仕事は忙しい。
ご主人様との時間も多くはない。
怪我だってした。
でも、友人がいて、今までしてこれなかった文化祭の準備をして。
こうして笑いながら衣装とか合わせるのって、こんなに楽しかったんだな。
綺麗に畳んで出ていけば、裁縫をしてくれた子が「手直ししたい」と言っていたので手渡した。
自力でやるっていうのは、金持ちなこの高校なのに珍しいと思う。
業者とかに頼んでしまいそうなのに。
もちろん、教室の準備などは少し業者に頼んでいるところもあるようだが。
「ナオー、楽しい?」
いつの間にか隣にいた華也に笑いかけられる。
頷けば、華也は嬉しそうに笑みを深めた。
廊下でなにやら機材を運んでいるらしい幹彦と目が合う。
ぼーっとしていたらしい幹彦は、はっとしてから慌てるように目を反らした。
と、感じてしまったのだが、機材を運んでいる途中なのだから、前を向き直しただけだろう。
…と、思う。
「あーっ重かったー!」
「おつかれさま」
そうなんだろう。
今は普通なのだから。
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