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去り際に、「頼ってください…。ボクたち親衛隊はそれを望んでいます…」と言われて、ただ単純に嬉しいもので。
それには笑顔で頷きを返した。
生徒会室に近付くにつれて、人気はなくなる。
忙しいこの時間、その上生徒会がいる、という空間に人が集まることはない。
さっきまでとは違い、静かな場所にぽつりぽつりと響く声はやけに耳に入った。
何を言っているのかは分からないが、サボリなら、注意しなければいけないな。
声がする方向へと足を進める。
「…って、幹彦」
ぽつりぽつりと話していたのは、幹彦だった。
はっと驚いた表情をした幹彦は「すみません。またかけ直させていただきます」と小さく言うと、ケータイを慌てたようにしまった。
誰と話していたの、なんていうプライバシーに関わることは聞かないが、何もそこまで慌てなくても、とは思う。
それを言うつもりはないが。
「こんなところで電話?」
「え、ああ、うん。戻らなくちゃな!ナキも頑張れよ」
ぽん、と背中を押された。
なにを、そんなに焦っているのか。
あわただしく走っていく幹彦は、ケータイを気にしていた。
邪魔をしてしまったようで、申し訳ない。
少し気を落としていると、百瀬さんがひょこりと顔を出してきて、生徒会室に向かっていたことを思い出した。
「どうした」
「いえ、なんでもありません」
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