桜歌学園に行く日。

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ネクタイを引っ張られ皐月さんと顔が近くなる。 視線を何処にしようかと迷ったが、彼は前髪が長いので目のところ(前髪)を見ていよう。 「わ、分かりました」 「じゃー、呼べよ」 促すように少しだけまたネクタイを引っ張られる。 「さ、皐月…」 小さい声でそう呼べば皐月さ…皐月はネクタイを離し笑う(多分)。 「そーそー!分からないことがあったら聞けよ?俺が答えてやっからな」 皐月はくるりと回ると歩き出した。 「こっち」と言いながら指を指す。 先生が言っていたように、寮長室はなかなか近いらしい。 皐月が連れてきてくれた所には『寮長室』というプレートが掛かっていた。 ノックしようと手を出せば、皐月がそれを止めるように腕を上げた。 「しっ!ちと、待ってろよ…」 そっと耳をドアに押し付けた。 なにをしているんだろう。 周りから見たら、おかしな人だな。 もしかして、おれも一緒にいたらそう見られるんだろうか。 皐月はいい人だけど…なぁ。 「ふっふっふ…。今日も元気にヤってらぁ!」 ニヤニヤと笑う皐月は、余計おかしな人に見えてくる。 「なにを、やってるんですか?」 「そんなもの、1つしかねーだろ?」 笑みを深くして皐月はおれを見る。 「えっち」 さらっと言われた言葉の意味を理解するのに時間がかかった。 「え…?」 理解すると同時にカッと顔が赤くなる。 最近、家を出てから顔が赤くなる率が増えたな。 「あ、意味分からない?教えたげる?」
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