桜歌学園に行く日。

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おれよりも一回り体の大きい皐月におれは軽々と持ち上げられる。 肩に担がれ、皐月は寮長室から出た。 意外と、悔しいなこれ。 別に平均より少し小さいだけで、おれは平均なんだ。 体重は軽めだけども。 「皐月、遊ぶってなんですか?」 「あー?いや、特にないって」 スタスタと進む皐月の背中を軽く叩き、下ろしてという意を伝える。 皐月にはしっかり伝わったようで、すんなり下ろしてくれた。 「あ、でもなー。その敬語止めれ」 下ろしてくれたところはエレベーターの前。 そりゃそうだ。 これだけ大きな寮なんだから。 一番上の人は階段でなんていけないだろうから、エレベーターが付いているんだろう。 「直紀って僕と同じ学年みたいだしな!敬語使う必要なんてないっしょ」 敬語は、ある意味癖だ。 桐生という家で産まれたから、生きてきたから、常に敬語だった。 敬語じゃない人なんて数人しかいない。 「でも…」 「敬語って距離感じるんだってー!止めろって」 別に敬語が好きなわけでもない。 敬語じゃないほうが、楽なところもある。 「うん…じゃあ敬語、止める」 「よっし!」 皐月は右手を出した。 「改めてよろしく、直紀」 そっと手を出せば、皐月は力強く握りしめてきて。 痛いと思いつつ、下心も何もない人と知り合えたのは久しぶりで。 嬉しく思った。 「よろしく、皐月」
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