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なんだかんだ言いながらしっかり熟睡した。
朝、佐々木先生のところに行けば、
「お、来たか。じゃぁ行くか」
吸っていた煙草の火を消して言った。
おれのクラス、2年A組に着くまで無言。
あまり道を覚えるのが得意ではないおれは、周りを見渡しながらクラスまでの道のりを覚えるのに必死だった。
「ここ。俺が呼んだら入ってこいよ」
「はい」
先生は「席つけ」と言いながら中に入っていく。
無駄に緊張するこの間。
まだ5月前半という普通じゃない時期の転入。
どう見られるのだろうか。
教室が一気にザワザワとし始めた。
先生がおれのことを言ったんだろう。
ちらほらと「かっこいいかな」とかが聞こえてくる。
ハードルをあげないでくれ…。
「直紀、入ってこい」
一度、小さく深呼吸をしてからなるべく音をたてないように開ける。
特に意味はない。
しん…となってから、またざわつき始めるA組。
「はい、自己紹介」
先生に言われ、あらかじめ考えていた自己紹介を言う。
「宮野直紀です。中途半端な転入ですが、これからよろしくお願いします」
人前での挨拶というのは、何度しても苦手だ。
桐生の息子としてパーティーに行ったときも、毎回ドキドキしながらやったものだ。
「よーし、直紀の席は…加賀美の後ろな。加賀美、手ぇ上げろ」
「はーい」
って…え。
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