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人前は苦手。
注目されるのも好きじゃない。
だけど、おれは桐生という名を背負って生きていたから、出来ないわけじゃない。
捨てた名だけど、振り向けば桐生は後を追いかけてくる。
桐生で覚えた偽物の作り笑いの仮面。
桐生で学んだ姿勢、目線、言葉。
『この度、生徒会補佐をやらせていただく宮野直紀と申します。転入したばかりで知らないことも多々ありますが、自分の持てる力を使い、微力ながら生徒会を支えていこうと思います。よろしくお願いいたします』
高校生なら、これぐらいで十分。
綺麗なお辞儀をして、顔を上げる。
生徒たちは静かに聞いてくれていて、話しやすかった。
『生徒会からは以上です。3日後に新入生の歓迎会がありますので体調を崩さないように。では、集まっていただきありがとうございました。解散とします』
最後も秋月さんが閉め、終わる。
新入生の歓迎会って、なに?
おれ、知らないんだけども。
皐月に聞けば分かるかな。
それにしても、生徒がなかなか帰らない。
体育館に残って生徒会を眺めている。
あ、この人たちが親衛隊ってやつなのか?
分からないが。
ぼーっと眺めていると肩を叩かれた。
「あっ…と、百瀬さん?」
「帝、呼んでる」
小走りでご主人様の所に向かえば、投げつけられるように何かを渡された。
袋に入っていたそれを開けてみれば、赤色の首輪。
「ぶふっ」
夏川さんがお腹を抱えて笑っているが、え、なんなのこれは。
首輪って…おれ、そんな趣味ない。
「付けろ」
「え、」
「お前は、俺の犬だろう?」
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