2年A組に入る日。

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一瞬、動きが止まった。 いや、食べたいとは思ったけども。 まさか「あーん」が来るとは。 「えー、食べねぇの?じゃー僕食べちゃうぞ」 「あっ」 戻っていくスプーンを、思わず引き止める。 駄目だ…本能的に止めてしまった。 だっておれ、甘党だから。 「にゃはは、ほら、食べてぇんだろ?はい、あーん…」 い、一回くらい…。 パフェを食べてみたいし。 自分の中で覚悟を決めて、きっと火照っているだろう顔をスプーンに近付ける。 ぱくっと効果音がつくような勢いで食べてやった。 もう、吹っ切れたさ…。 口の中には、広がる甘いアイスと生クリーム。 それから、苺の酸味がたまらない。 加減が絶妙だ。 「くはっ!思った以上に萌えタギル!」 よく味わって飲み込む。 美味しい。 本当に美味しい。 「皐月…もっと」 見上げるようにして皐月にお願いする。 一回も何回も、たいして変わらない。 うん、きっとそうだ。 パフェを食べたいという欲望のが羞恥より高い。 「上目遣い…だと!?」 皐月は顔を背け、鼻を押さえる。 「くそう…やるな直紀め…。あーん、でなら食わせてやんよ!」 「うん、それでいいよ。…ん」 口を開けて皐月を待つ。 ボサボサの髪から見える耳が、真っ赤に染まっていた。 なんでだろうな。 「僕、パフェ頼んで良かった…!」 そう呟くように言いながら、口に入れてくれる。 苺のソースのかかったアイスが美味しい。
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