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百瀬さんは音もなく立ち上がり、前に秋月さんが入っていた場所に行った。
きっと彼処は安易キッチンにでもなっているのだろうか。
ぼーっと立っているのもあれだし、行ってみよう。
「どした?」
お湯を沸かしながら、聞いてくる。
おれは先程の百瀬さんのように首を振った。
「これからはおれが作れるように、覚えようと思いまして」
そう伝えると、百瀬さんは戸棚を開けて指差した。
そこを除きこめば、沢山の種類の紅茶が入っていた。
その他にも、お菓子など。
「真咲、これ」
紅茶を指差しながら言う。
そのまま百瀬さんは指を滑らすように次の紅茶を指差した。
「咲哉、あれ」
きっと、皆の好きな紅茶だろうか。
「帝、そっち」
これからは淹れられるように、教えてくれているのだろう。
口数は少ないけれど、優しい人だ。
「咲哉、アップルティー…嫌い」
なるほど、秋月さんはアップルティーが嫌いなのか。
気を付けて出さないとな…。
「百瀬さんは何が好きなんですか?」
少し間が空いてから、指差されたのはまた違う紅茶。
みんな、バラバラな種類の紅茶が好みなのか。
淹れるのも大変だな、これは。
「皆さんの好きな紅茶、早く覚えて美味しく淹れられるよう、頑張りますね」
決意を伝えれば百瀬さんは優しく笑った。
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