3504人が本棚に入れています
本棚に追加
おれを呼び出した本人のご主人様を待ちながら、紅茶を飲む。
ちなみにアップルティーだ。
秋月さんもいないし、大丈夫だろう。
元々おれもよく話す方ではなく、百瀬さんも話さない人なので無言の間が続く。
それも、別に苦じゃない無言の間だ。
こういう空間は、好き。
何も考えずいられるから。
客人用のソファに向かい合ってぼーっとする。
数分そんなことをしていると、ご主人様達が帰ってきた。
「あ、直紀さん。もういらっしゃっていたのですね。お待たせして申し訳ありませんでした」
紙袋を持った秋月さんが綺麗な角度で頭を下げる。
ど、どうしよう…と戸惑えば夏川さんが笑いながら秋月さんの背中を叩いた。
「もぉ、直紀くん困っちゃってるよぉ」
秋月さんが顔を上げたので、大きく頷く。
笑みを返してくれた。
そのまま紙袋をおれと百瀬さんの間にあるテーブルに置く。
何だろう、と除きこもうとすればご主人様が紙袋をひっくり返した。
中から出てきたのは、四角く織られた紙。
それが紙袋一杯に入ってたようだ。
「新入生歓迎式のことは、誰かから聞いたか?」
「あ、はい。友人に聞きました。去年は宝探しだったようですね」
隣に座ったご主人様を見ながら言えば、ご主人様は四角く織られた紙を開いていく。
「毎年3年からの希望で決まる。まあ、全て出来るわけでもないから、こうしてアンケートを取るわけだ」
ペラリと見せられた紙には『鬼ごっこ』と書かれていた。
「数年前まではパソコンでやっていたそうだが、不正に変えたやつがいたらしくその翌年から生徒会が直々にチェックしているんだ」
めんどくさい、というのを全面に出したご主人様はため息をつく。
「補佐の直紀くんはぁ、基本お手伝いだから見て覚えていってねぇ。とりあえず、今日はこれをチェックするのをよろしくぅ」
夏川さんは百瀬さんにペンとリストのような物を渡す。
「弥生、鬼ごっこ」
ご主人様がそう言えば、百瀬さんは書き込んでいった。
最初のコメントを投稿しよう!