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夏川さんも秋月さんも紙を開いては読み上げる。
おれも慌てて読む。
様々な言葉が飛び交う中、百瀬さんはペンを走らせていた。
これ、全部聞き取れているのか?
紙も半分になって余裕が出てきた頃、ふと思った。
「かくれんぼ」
「出店」
なん十分、いや一時間は越したかな、という頃やっと読み上げるのが終わる。
こんなパソコンでやればすぐ終わりそうなことを手作業というのは想像したより大変だった。
ずっと気になっていた『百瀬さんは全部聞き取れているのか?』という疑問を解決するべく、リストを見せてもらう。
『鬼ごっこ』と書かれた下に『正』の文字が。
他にもたくさん。
これ、全部聞き取れてる…?
「弥生は沢山の人の言っていることを聞き取ることが出来るんです」
なにそれ、あの有名な昔の人みたいだ。
だから一人で書き込んでいたのか。
納得。
「すごいですね。おれも、出来るようになりたいです」
本心だ。
一気に聞き取ることが出来たら、将来とても役に立ちそうな気がする。
「そのうち、出来る」
百瀬さんはそれだけ言うと、一つ欠伸をして隣に座っている夏川さんの足に寝転がる。
膝枕っていうやつだ。
「わぁお、ここで寝ちゃうのぉ?まぁ、いいけどねぇ」
夏川さんはそっと頭を撫でていた。
そのうちに、百瀬さんの寝息が聞こえてくる。
「今日はもう終わりだ。帰っていいぞ」
「ご主人様は?」
「俺は少し書類をやってから帰る」
補佐なのに、いなくていいのか?
いや、まだ何も出来ないだろうけど。
「そうだな、直紀料理は出来るか?」
こっそり家のキッチンで料理をしていたことが何度もあるのでそれなりに出来る。
「では、シチューを頼もうか」
これは、作れということだろうか。
「はい!」
ご主人様に美味しいと言ってもらえるよう、頑張ろう。
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