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夏川さんはメモを開き、前を見据える。
こういうところを見ると、やっぱりこの人もいい家柄の人なのだと実感する。
『はぁい、じゃぁルールを言うよぉ』
語尾を伸ばすのは相変わらずだけど、夏川さんは普通に話すことも出来るし。
だって、髪を切ってもらった時は敬語だったから。
『鬼ごっこは捕まえる側と逃げる側に別れてやるゲームだよぉ』
隣にいる百瀬さんはうとうとしているようで、目を瞑っている。
『逃げる側は新入生と生徒会から2人ねぇ。生徒会の2人はぁ、直紀くんと弥生が出まぁす』
生徒が驚きの声を上げる。
え、おれも知らないんだけども。
『他の2、3年と残りの生徒会が捕まえる側だよぉ』
驚いたまましばし固まれば、右手をぎゅっと握りしめられた。
横を見れば百瀬さんがふわりと笑みを浮かべている。
「がんば…ろう」
不覚にも、その姿がとてもかわいく見えてきゅんとした。
「はい」
『ここでぇ、毎年恒例のぉ頑張った人へのご褒美発表いえーい』
夏川さんが手を叩けば生徒たちも嬉しそうに顔を綻ばせ手を叩く。
『多く捕まえた上位5名とぉ逃げ切った人にはぁ、3つの中からご褒美を選んでもらうよぉ。1つは生徒会の誰かとデート1日ぃ。もう1つはぁ、授業1ヶ月間免除ぉ。最後はぁ、食堂3ヶ月間無料だよぉ!みんなぁご褒美取れるように頑張ってねぇ!』
以上、と言うように夏川さんは手を振ってから秋月さんにマイクを戻す。
『では、注意事項を書記から。弥生』
「ん」
話すことを苦手とする百瀬さんには、一番楽なところを担当してもらっている。
おれは初めてのため、何かを言うという作業はない。
『故意、傷付ける…だめ』
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