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教卓を叩かれ、慌てて飛び出す。
その瞬間皐月の手がおれに少しだけ触れた。
勢い余って後ろにあった黒板に背中を打つ。
皐月のせいだ。痛い。
「ちくせう!あと少しだったぜ」
教卓のお陰でギリギリ手が届かないらしい。
横に若干動けば皐月も同じように動く。
これでは逃げられない。
ずっとここにいては、他に鬼が来たら終わる。
「ごめん、皐月…っ」
きょとんとした顔の皐月に申し訳なくなりながら、おれは思いきり教卓を蹴った。
そうすれば、当たり前だが教卓は皐月の方に行くわけで。
「ぎゃ」
ガツン、と鈍い音をたてながら皐月と一緒に倒れていった。
「いっつー!こんにゃろーっ」
「本当ごめん、今度なにかしてあげるから…っ」
それだけ言い残し、おれは教室から出る。
もしかしたらさっきの音で近くにいた鬼がこっちに来るかもしれない。
階段に向かって走れば、曲がったところで生徒と遭遇。
咄嗟に避ければ、相手は華也。
華也は手を伸ばした形のまま「ちぇー」と口を尖らせる。
「やっぱりナオだった。惜しかったなぁ」
後ろに走ればきっと皐月と会ってしまう。
でも前には華也。
さて、どうしようか…。
右横は壁。
左は、窓。
幸いここは一階でたいした高さもない。
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