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シューズのままだがしょうがない。
まあ、大丈夫だろう…と思う。
「あっ」
手を伸ばす華也を横目に、おれは窓枠を飛び越え外に着地する。
じん…と来る痛みに耐えすぐに立ち上がる。
早く逃げなければ。
とりあえずシューズだからまた校内に戻るべきか。
戸惑ってるのか、一階と言えど少しだけ高さのある所を飛び越すのに躊躇しているのか、華也は窓枠から覗いているだけだ。
ここに皐月が来てしまったら、きっと皐月は躊躇なく飛び越えて来るのでさっさと逃げよう。
なんだか、2時間逃げ切れそうな気がしてきた。
しっかりシューズに付いた砂を叩き落としてから校内を歩く。
今度は二階。
「あ、直紀くん見つけたぁ」
間延びした声が後ろから掛かった。
振り向けばやっぱり夏川さんがいて。
声を出さなければ気付かなかったのに。
それに気付いてか、夏川さんは口に手を当てていた。
どちらが動くわけでもなく、動きが止まる。
「なおき」
そうおれを呼ぶ声で、ほぼ同時に走る。
あれ、この先何があったっけ、と考えながら角を曲がれば先程おれを呼んだ百瀬さんがいた。
「こっち」
広い廊下を百瀬さんを追いかけるように走れば、夏川さんも後を着いてくる。
差も縮まるわけでもない。
だからといって広がるわけでもない。
同じ幅を保ったままいくつもの角を曲がったり、階段を登ったり。
流石に、ちょっと辛い。
「ん」
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