僕と貴方の物語を

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「薔薇を一輪くださいな。」 毎週、微笑みながらそう言ってくる貴方。 僕が薔薇を持ってくると、嬉しそうな顔で礼を言う。 僕は、貴方と話せるこの瞬間が好きだ。 何処から来るのか分からない。 名前も年齢も知らない。 しかし、貴方がとても綺麗だということは知っている。 いつからか、僕は貴方に恋をしました。 けれど、所詮僕は花屋のバイト。 貴方が僕の顔を覚えているかさえ怪しい。 毎週一輪ずつ買っていく薔薇の花をどうしているのかも聞けず、刻々と時間は過ぎて行く。 ある日、貴方は男と共に店に来た。 いつもよりもとびきりの笑顔で。 「薔薇の花束をくださいな。」 僕が貴方に花束を渡すと、貴方は顔を赤らめながら男にそれを渡した。 そして、いつものように僕に礼を言い、貴方は帰って行く。 その日から、貴方は店に来なくなった。 「毎週来てた―――さん、結婚してどこか遠くに引っ越したらしいわよ。」 認めない。 認めない認めない。 貴方はあんなにここに通ってくれてたじゃないか。 僕に笑いかけてくれたじゃないか。 なのに。 なのにっ! 何故違う男となんかと一緒になるんだ!! 僕が貴方を好きなように、貴方も僕が好きなはずなんだ!!! きっと、その男にそそのかされただけなんだ。 脅されただけなんだ。 可哀想に。 そんな男、僕が殺してあげるよ。 その日から、僕は貴方を探した。 探して探して探して。 ようやく貴方を見つけた。 いつか、貴方と花屋に来た男に幸せそうに微笑む貴方を見つけた。 そんな貴方の腕の中には――――。 気がついたら、あたり一面真っ赤だった。 下をみるとあの男の頭。 ざまあみろ。 あの人に手を出すから天罰が下ったんだ。 あの人とお前の子供も、この世にはいない。 これでやっと貴方と過ごすことが出来るんだ。 さぁ、始めよう。 僕と貴方で紡ぐ、二人の物語を―――。
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