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「なかなか頭の回転は早いようね……」
私は腹部を押さえながら、格子の外側に居る奈良の顔を見上げた。
そりゃそうか。私を連れていくならカードの中に閉じ込めておいた方が安全だ。その方が本人も私を気にする事なく自由に動く事ができる。
「そりゃ、そうよ……アナタを渡すわけにはいかないもの」
さっきまでは優しさに満ち溢れていた奈良の瞳は、深く沈んでいくのを感じた。
闇を隠していたかのような瞳。さっきまで見ていた普通の女の子が、こんな瞳ができる事に私は驚きを隠せなかった。
「どうするつもり?」
「心配しないで。ちゃんとアジトまで連れていくから」
奈良は薄らと笑みを浮かべると、私から視線を逸らした。
そしてプリズンアクセスリーダーを装着する。そうだ。私に会う為には、志斎が寝ている部屋を通ってこなければいけない。
この子はそれを何なく乗り越えて、ここまで来たんだ。
「待って!」
呼び止める声も虚しく響き渡り、プリズンアクセスリーダーを起動させた奈良の姿はあっという間に消えた。
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