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「ここのトイレは、黒服たちが使用するのを禁じているの。黒服たちのトイレ施設は自分たちが泊まり込んでいる宿舎にちゃんと用意されているし、敷地内なら他にも道場とかがあるし。まあ、禁じている理由も水道管の不具合がずっと続いているっていうところみたいだけど」
俺は試しに自分の側にあった洗面台の蛇口を捻ってみた。水は勢いよく飛び出して、排水溝に飲み込まれていく。
「それが何の関係があるんだ?」
「ここのトイレは使用できないんじゃない。使ってほしくないのよ。だからこそ、何となく気にならない程度の理由にしておいて黒服たちからも遠ざけている」
その直後だった。奈良が足を振り上げると、華麗に回し蹴りを扉に向かて放った。
ズガンと鈍い音と共に、閉まっていた扉は勢いよく奥側へ倒れ込む。
「な、なにやってんだよ」
奈良は破壊した扉を引っ張り出して、少し自慢げな顔でこう言ってきた。
「見てみなさい」
俺は右から2番目の個室を覗き込んだ。
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