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「――――!」
本来であれば、部屋の奥側に設置されているはずの便器がそこにはない。
ここは笑っていいのか、どんな反応をすればいいのか分からなかった。
追い詰められているからこそ、妙に笑えてくる。今はそんな気分だ。
「これが志斎が何かあった時の為に用意してある保険。これだけ広大な屋敷とはいえ、壁を囲まれでもしたら終わりだからね。これくらいは用意してあるって事。ちなみに、このトイレには志斎が住んでいる屋敷の壁際から真っ直ぐ来れるように作られている。一番安全なルートを考慮して作られた」
扉を開けた先には、そもそも便器どころか床がない。
そこには、下に降りる為に階段が続いている。
こんなカラクリを用意していたなんて聞いた事もなかった。
「ちなみに志斎の屋敷を建設したのはすごく小さい会社で、この屋敷を作ってから1年以内に倒産に追い込まれて、建設に携わった者のほとんどが消されているわ」
「どういう事だ……?」
「頭の良いアンタなら分かるでしょ? それだけ志斎が用心深いってこと」
階段は下が見えないほど深く続き、闇が広がっていた。
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