最初の女

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「さあ、行くわよ。そろそろここのトイレも見つかるだろうから」 奈良は強引に俺の手を引っ張って、階段を降り始めた。 「ちょっ」 予めこの逃走ルートを使うつもりだったのか? もう片方の手でペンライトを取り出し、先を照らし出す。 探るような様子はなく、自信に満ち溢れて足を進めている。もうこの先の道が分かっているっていう事だ。 階段は予想以上に深く続いていた。それでも降りて1分もしないうちに終点が見えてくる。 最後の一段を降りると、奈良は俺の手を離して振り返り、上を見て確認した。 「どうやら追ってくる様子はないわね」 奈良は小さな声でそう言うと、再び先に進む為に早足で歩き始める。 「この通路はどこまで続いているんだ?」 「すぐにわかるわよ。そんなに長くないから」 「勿体ぶるなよ。重要な事だ」 「アンタって意外と冷静じゃないのね」 奈良は少し小馬鹿にするようにクスクスと笑った。
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