74864人が本棚に入れています
本棚に追加
/2020ページ
「さあ、行くわよ。そろそろここのトイレも見つかるだろうから」
奈良は強引に俺の手を引っ張って、階段を降り始めた。
「ちょっ」
予めこの逃走ルートを使うつもりだったのか?
もう片方の手でペンライトを取り出し、先を照らし出す。
探るような様子はなく、自信に満ち溢れて足を進めている。もうこの先の道が分かっているっていう事だ。
階段は予想以上に深く続いていた。それでも降りて1分もしないうちに終点が見えてくる。
最後の一段を降りると、奈良は俺の手を離して振り返り、上を見て確認した。
「どうやら追ってくる様子はないわね」
奈良は小さな声でそう言うと、再び先に進む為に早足で歩き始める。
「この通路はどこまで続いているんだ?」
「すぐにわかるわよ。そんなに長くないから」
「勿体ぶるなよ。重要な事だ」
「アンタって意外と冷静じゃないのね」
奈良は少し小馬鹿にするようにクスクスと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!