最初の女

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「ほら、行くわよ」 「ああ」 という事は、ここは志斎さんの生の情報が詰まっている場所だ。母親と二人で住んでいた場所。父親はどうしたんだろうか。 その母親は今はいないのか? 志斎さんの年齢を考えれば、いなくてもおかしい話ではない。生きていたとしても、相当な高齢だろう。 スタスタと歩き玄関まで足を運ぶな奈良を追いかけてた。 「そう言えば、通路の入口を冷蔵庫で押さえても家の外で待ち伏せされたら意味ないんじゃないか?」 「あの扉は通路側からしか開かないようになってるの。おそらく追いかけてきたのは志斎本人よ。あの通路の事は誰にも話してないはずだから。この家の外に人を回すほど余裕はないはず」 玄関の扉は、今とき珍しいと言ってもいい横に引くタイプのガラス戸だった。 奈良は鍵を外すと、扉を開けて外に出た。 「あれ?」 玄関から真っ直ぐ伸びた石畳の道。その先には、一台の車が停まっていた。
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