庵瀬マモル

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誰にだって、弱味の一つや二つはある。 揺れ動く電車内。痴漢で男が捕まる現場を目撃した。 そこそこの値段はしそうなスーツを身に纏った男は、必死に否定していたが、取り押さえられると観念したみたいで情けない表情を浮かべている。 結局、次の停車駅に到着すると、何人かの男たちに囲まれて被害者の女性に連れられていってしまった。 「あちゃー。ありゃ、もう駄目だぜ」               隣に立つ同じ大学のリクが、言葉とは裏腹に楽しげにそう言った。 「そうかもな」        俺の返答に、リクが少し驚く。 「やっぱり? あれって事務室まで連れてかれたら、もう終わりなんだろ?」 「ああ。痴漢は被疑者にとっては圧倒的に不利だからな」 「んで、お前の見解はどうなんだよ?」 リクが興味津々に尋ねながら、吊革を両手で掴むと体重をかけながら俺の答えを待った。 「やってないだろうな。捕まった男は」 「マジかよ。何でそう思うんだ?」 俺は、タブレットでパズルゲームをやりながらリクに説明した。
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