雨野ツキヲ

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その女なんか、完全に俺が犯人だと決めつけていて、人生で初めてと言ってもいいほど腹が立った。 駅に到着後、俺はやってないから素直にその事を話そうと、女と、正義感満載の数人の男と一緒に事務室まで行ったんだよな。 それが運の尽きだった。 結果的に、俺は人生でどん底に突き落とされることになったんだ。 逮捕、起訴、裁判。 金も持ってかれたし、会社にまでその話が伝わり辞職にも追い込まれた。 それらが全て1カ月の間に起こった。 初めて裁判なんてしたけど、痴漢は物事がスピーディーに進められるんだな。 んで、今は無職になってしまったわけだ。 これまで真面目に生きてきたことを否定されるかのように、前科痴漢持ちになってしまったんだ。 無職になった俺は、無性に腹が立って被害者となったあの女のことを調べまわった。 そしたら、その女は高校の教師だったんだよな。 さらに腹が立ったのは、その女教師は女子生徒に通学時の痴漢撃退の指導をしてるんだってよ。 おい。お前が犯人にしたのは男は冤罪だって、殴りかかりたくなったよ。 冗談混じりに、ナイフで後ろから刺し殺してやろうかとも思ったよ。 でも、俺にはそんな勇気はない。
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