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「あれ、でも」
家にエルフは居ない。
全く、記憶にすら。
「のん太って名前だったの。運命の人と結びつけてくれたお母さんのキューピットだった」
だった。
だった。
「でもね、お父さんと喧嘩した日があって」
「何もかも嫌になって、本気で別れたいって思ったのよ」
「寄り添って励ましてくれるのん太が、キューピットが途端に悪魔に見えてきてね」
「おーい」
階段下から、お母さんを呼ぶお父さんの声。
「ふふ、変な話しちゃったわ」
ムーノをもう一度だけ撫でてから、お母さんは部屋を出て行った。
「……」
「……あのさ」
何とも言えない空気を崩そうと口を開く僕。
「あ、唐揚げがおすすめよ。唐揚げ」
わざわざ戻ってきて、お母さんはにっこり笑った。
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