3/3
前へ
/12ページ
次へ
「あれ、でも」 家にエルフは居ない。 全く、記憶にすら。 「のん太って名前だったの。運命の人と結びつけてくれたお母さんのキューピットだった」 だった。 だった。 「でもね、お父さんと喧嘩した日があって」 「何もかも嫌になって、本気で別れたいって思ったのよ」 「寄り添って励ましてくれるのん太が、キューピットが途端に悪魔に見えてきてね」 「おーい」 階段下から、お母さんを呼ぶお父さんの声。 「ふふ、変な話しちゃったわ」 ムーノをもう一度だけ撫でてから、お母さんは部屋を出て行った。 「……」 「……あのさ」 何とも言えない空気を崩そうと口を開く僕。 「あ、唐揚げがおすすめよ。唐揚げ」 わざわざ戻ってきて、お母さんはにっこり笑った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加