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送るよ、とショーンは言ったけど
何のことはない、駅まで二人並んで、目的地に向かってひたすら歩くだけ。
…まぁ少し寂しい道も近道できるから助かる、かな。
しかし、スケートリンクであんなに軽くて饒舌だったショーンは、
またもマイペースに自分のお気に入りのナンバーなのか、舞愛には原曲のわからない(おそらく古今東西のユーロ系ポップスらしき曲)をず~っと口ずさみながら、ぶらぶらと歩いている。
(……あ、今の曲知ってる…、マイケル・ジャクソンの『スムース・クリミナル』)
そして少し人通りのある場所に来ると、すれ違う人達がお約束のように振り返る。
(…ショーン…、背高いしこの美形度だもんねぇ…)
(…じゃ、なくて。)
「なんで…、スケートリンクで清掃の仕事なんかしてるんですか?」
会話を始めたのは舞愛の方だ。
沈黙が気まずいから、なんて殊勝な心遣いからじゃない。
…そもそもこの人、沈黙してないし。
(あ、歌うの止めた)
無視されるかも、と半分くらい思ってた。
少なくとも会話する気はあるらしい。
軽いノリで近づいてわざと警戒させて、肝心なこと……自分の事情を話さないで済まそう、って腹じゃないのかなこの人。
そんな意地の悪い、裏読み。
(私って…性格悪…)
しかし普通に気になるものは気になるわけで。
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