第3滑走・『天才vs天才』

2/6
825人が本棚に入れています
本棚に追加
/694ページ
舞愛は幼い時から、運動神経はよい方だった。 いくつかの「習い事」を親に提示され、自分が選んだのが「フィギュアスケート」だったらしい。 最初は週に一回の「教室」だった。 氷の上にいるのが楽しくて仕方なかったが、ジャンプは教えてもらえなかった。 ある日、遊びでテレビで見た大人の選手の真似をしたら、アクセルジャンプが一発で跳べてしまった。 先生が血相を変えて飛んで来た。とっさに怒られる、と思ったが、なぜか親が呼ばれ、2駅向こうの競技向けのクラスに毎日通うことになった。 …そこでもすぐ同い年の子以上にジャンプやスピンを次々覚えてしまったため、 あれよあれよと有名コーチを紹介され、全日本の合宿に参加することになった。 毎日遠くのリンクに通い、ノービスやジュニアでは夏休みから大事な大会が始まるから、 一年中家族を巻き込んでスケート漬けの生活が10年近く続いた。 そこまで続けたスケートを止めたい、といった時も親は無理に引き止めなかった。 親には悪いことしたかも、と少し思う。 普通に近所の教室でバレエやピアノでも習って、普通に塾通ったり遊んだりしながら暮らしてたら、 今頃どうしてたのかな、と他人事のように思う。
/694ページ

最初のコメントを投稿しよう!