第3滑走・『天才vs天才』

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結局、上のクラス…ジュニアやシニアの選手達のレッスンも終わり、リンクが閉まるギリギリになってから舞愛は滑り始めた。 トレーニング漬けの毎日から解放される、と思った時はあれだけほっとしたのに、「習慣」というのは恐ろしいもので、ランニングやストレッチは気づくとまだ毎朝続けていたし、リンクにも時々こうして乗っていた… もっとも国際試合で活躍していた時と比べたら、ウォーミングアップとも呼べない程度だったけれども。 リンクが閉まる合図の音楽が流れ、レッスンの子達も帰っていく。 最後の最後。 どのスケーターの視界にも自分が入っていないことを確認して。 (…まだ跳べるかな…) 四回転サルコウ。 舞愛をジュニアオリンピックのてっぺんまで連れて行ってくれたジャンプだ。 …そして、習得したのも「小学生の時、遊びでたまたま」だった。 …そんな甘いもんじゃない、ってわかってるけど。 結果とか勝ち負けとか。 考える必要のない今、無心で跳んだら。もしかしたら。 (回り切れたら) (降りられたら) (もう一回スケート、やり直そう…かな) 助走のスピードを殺さないまま左脚の内側に重心を移し、右のエッジで思い切りよく踏み切り、離氷。 細かい花びらが散ったように、リンクに氷の飛沫が舞う
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