第3滑走・『天才vs天才』

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スケートリンクの入り口は鍵を閉めてしまったが、清掃用に一カ所だけ開けてあるはずだから、と警備員さんに教えてもらった。 閉館時間はとっくに過ぎている。 (警備員さんは優しかったけど、清掃の人に起こられないかなぁ…) 教わったドアをそ~っと開けると、リンクの照明はほとんど消されていた。 リンクには窓らしい窓はなかったような気がする。でも今は、何かの光が反射しているのか、無人の暗いリンクの真ん中に、柔らかな白い光がぼんやりと丸く浮かび上がっていた。 ちょうどサーキュラーステップの軌道で満月を描いたかのように。 (…綺麗…) 舞愛はただその無人の氷の上を眺めていた。心の中に美しい音楽が流れ、もう一人の舞愛がリンクの月の上で心のままにステップを踏む。 (……あ…あれ?) やがて、耳を済ませさないと聞こえないほどかすかに… 静かに氷を削る音が暗闇の中から聞こえるのに舞愛は気づいた。 (誰か、滑ってる…?!)
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