第4滑走・『残像/残照』

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リンクの反対側…真暗闇の向こうに、ブレードの音がまた静かに消えてゆく。 舞愛は急に現実感を失って、それでも記憶の糸を懸命に手繰る… (今、リンクの向こう側にあの人がいる…?) (夢でも見てるの…?) 実はショーン・モリーというスケーターは連盟も頭を抱える、かなりの問題児でもあった。 記者会見での強気で俺様な態度や発言…、はおいておくにしても。 現役時代から何人ものコーチとケンカ別れしたり、有名女優やスモデル達との華やかな女性関係でマスコミを賑わせていた。それは、舞愛もアメリカにいた頃だったからよく知っている。 幸運にも現地で何度か、アイスショーや試合が開かれた。もちろん舞愛は彼の演技を観に行った。 舞愛はリンクに舞う彼が素晴らしいならそれでいい、という考え方だった。 (…プライベートなんか、そっとしておいてあげたらいいのに…) リンクに立ったショーンは、どんな映画やドラマよりも舞愛の心を釘付けにし、流行りの音楽よりも舞愛の心を魅了した。 もちろんスケーターとしての人気も圧倒的で。 冬季オリンピックでは絶対金メダルを穫ると思っていたし、事実その通りになった。
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